これぞtwitter政治学!Vitalik Buterin

https://twitter.com/VitalikButerin/status/1489998909761933320

Vitalikやっぱ面白いなあ…

東浩紀などがtwitterで開陳するtwitter政治学よりもよほど含蓄があるように見える。

“You can’t enslave or steal, so the government should not be able to enslave (conscription) or steal (taxation) either.”

本来の新自由主義とは、政府もヤクザもどっちもいなくなるというもの。しかしながら、昨今蔓延している「新自由主義」は、規制緩和などとやかましく喚き、政府の力は弱くなったものの、依然としてヤクザ(大企業、腐敗政治家、富豪、etc…)はいるため、結局ヤクザに怯えて暮らさなければならなくなるという、本末転倒な事態に陥っている。この問題に対してアルゴリズムでもって対処しようとするのが、crypto界隈ということであろう。(そういう意味では『ゲンロン0』などと同じようなことをしているというわけだが…)

最後の

“19. Perhaps even a lowbrow but still important part of the “post-liberal Western ideology” that @palladiummag keeps talking about. Not anti-liberal, but just… weird. Which is fine, because the underlying reality that it’s trying to understand is weird and only getting weirder.”

これはかなりの政治的名文と言っていいな…なかなか日本語だとこういう揺れ動きを納得させるような表現ができないんだよなあ…(英語と違って日本語は微妙な機微を表現できる、とよくプロパガンダされるが、英語の方がよっぽど絶妙なニュアンスを言い表すことができると思う。まあなんたって「何事にまれ、感ずべき事にあたりて、感ずべきこゝろをしりて、感ずるを、もののあはれをしるとはいふ」だからね…結局日本語におけるそういう感情は固定化されてるんだよね。)Twitterにおける「東浩紀的なもの」(Jリベラル!)に対する一つの解答と言えよう。

ただAI / crypt(あるいはtinkering / theory)の二項対立について2点ほど付け加えることがある。

まず、そもそも脆弱性やバグの存在のために、ソフトウェアそのものがブラックボックス時限爆弾なのである。ソフトウェア技術である以上、cryptであろうともopaqueとならざるを得ない部分はある。“8. Meanwhile, AI is the exact opposite. It really does produce wonders, but we can’t explain how it works, and there’s far more unprincipled tinkering than theory. And to be fair, the unprincipled approach does cause problems that crypto doesn’t have!“と言い、AIにおけるAdversarial Exampleを引いているが、同様のことはcryptでも起こり得ることなのである。ブラックボックスで、何が起こるかわからないものの、とりあえず信用するしかない。あらゆるソフトウェアは、綻びに満ちた砂上の楼閣(あるいは砂でできた楼閣)たる信用の上に立っているのである。

また、後半でも少し触れられているようだが、最終的にはtheoryとtinkeringの融合が果たされるべきであろう。theoryとは、達成するべき理念やイデオロギー、そこに立ちはだかるさまざまな問題点、それらを解決するために用いられるさまざまなアルゴリズムや数式、そしてそれらを説明する用語の総体だと言える。AIの界隈もこのようなtheoretical bodyを緊急に欲しているのである。(隠されたイデオロギーとして、そしてベンヤミンの言うZerstreuung(気を散らすこと)としてそれは存在するのかもしれない。もしそうであるならば、AIにおける気散らしの理論を構築し、普及させることが急務である。)そしてcryptにおいても、tinkeringが重要な立ち位置を占めることは、Vitalik氏が述べている通りである。

ただ、現在のcrypt界隈が上述のような新自由主義の理想を達成できているかというと、疑問ではある。果たしてプレイヤーが他のプレイヤーを搾取できないようにする仕組みを十分にアルゴリズミックに整備できているのか?また大きな目で見れば、結局ヤクザのマネーロンダリングなどにいいように使われ、彼らが他者を搾取し続ける仕組みを強化するだけに終わっているのではないかという批判もできるだろう。