ゲーム感想:夜明けの口笛吹き

とにかく音楽がすごい。全部の音楽のクオリティが高いが、特にタイトル音楽。まだゲームが始まってもいないのに、この曲だけで作品全体のコンセプトの30%から50%は伝えられてしまっているのではないだろうか。最初に流れるビートが伝える、ある種の切迫した、急かされているような感覚とか、時折流れる高音が表す、途切れていく、断片的な記憶のイメージとか、最後の穏やかなようでどこか緊張感のある無限ループの表す、終わりの見えない世界を延々と上昇していく感じとか、文字を一切使ってないのに伝わってくる。この音楽が物語の序文の役割を担っている。しかもmidiで作っているという。かなりピッチとかエンベロープ?とかの設定頑張ってるんだろうなあ。midiの限界に挑戦してる。

(作者の音楽、ふりーむで買えるらしい→https://kiiichi.blog.shinobi.jp/%E5%89%B5%E4%BD%9C/%E3%81%B5%E3%82%8A%E3%83%BC%E3%82%80%E3%80%80%E6%8F%90%E4%BE%9B%E6%A5%BD%E6%9B%B2%E4%B8%80%E8%A6%A7

心理的・哲学的・シュールでありつつも、「キャラクターたちと一緒に旅している感」の演出を怠らず、王道RPGのような側面もあり、キャラクターの「萌え」/「尊さ」要素も着実に散りばめられていて、「セカイ系」として最高の完成度を持っていると思う。(この言葉で片付けてしまっていいのかはわからないが。)

一般に「セカイ系」作品は、その世界観の唯一性というか、特殊性を説得・納得させるような作りにしてしまいがちだが、この作品は(そこまで長くないということもあり)適度に抽象的で、適度に具体的な感じがある。私たちが「萌え」/「尊さ」に没入している間でも、同時に、私たちはなぜこういう趣向の作品を面白いと思うのだろうかという、より高次の思考を刺激するようになっている。閉じていない、さまざまな問いが開かれている。キャラクターと世界観を作り込みつつ、一方ではそれらは問いのきっかけに過ぎないとするような態度も同時に存在するのが、特筆すべきところだ。ゲーム性とメタ・ゲーム性がここまで共存できている例は、少ないだろう。

印象に残ったセリフ……

最後の最後:「一番正しい知性と選択を」この言葉もなかなか神妙で、深いことを言っていそうで言っていないように見せているというか、「少し浮かせている」感じがある。でもそのことが逆に、ゲームを締めくくる言葉として、作中で提示されたあらゆるテーマに言及するような言葉にもしている。

旅館の宴会場にて:「赤いのがどーたら」急に現実社会へと引き戻される感覚。

2ch発ならではの強みかもしれない。chanカルチャーにうっすらと偏在する、「ナラティブに対する懐疑・憎しみ」のようなもの。海外へも輸出されたそれはQAnon運動となり、なぜか独裁者のナラティブへの傾倒へと反転してしまった。でもそれは、2000年代初頭に、「少し浮かせる」やり方として、たしかにここに芸術表現として生きていたんだ!

という気持ち。