one night, hot springs 感想
ADVというゲームジャンルは、セラピー的であると言える。なぜなら、1週目は、役になりきり、自分が言いそうな選択肢を選んでエンディングまで辿り着くが、2週目以降は、普段の自分がしないような行動や発言を行わなければ、別のルートを開拓することはできないからだ。この短いゲームは、短いからこそ、そうした自己変容、自己啓発的な側面を非常に濃縮して表現している。残念ながら多くのADVは、最終目的が「誰々を攻略する」ことに設定されているため、そうしたゲーム性の本質部分が隠されてしまいがちだ。一見するとこのゲームの目的も同様に、他のキャラクターの攻略であるように見える。しかし実際のところは、よくよく考えてみると、このゲームの攻略対象は、徹頭徹尾「主人公自身」と言えるのではないだろうか。
キャラクターも結末もルートも、夢のように移ろいゆくものでしかない。時間を巻き戻し、繰り返し多種多様な道筋をスクリーン越しに見るうちに、ゲーム上の世界との接続も、ゲーム上の他者との接続も、だんだんと薄れていく。それはまさに、私たちが現実世界で味わう「あれ」と似たものなのだ。ゲームというのは、現実世界から突き放された者をもう一度突き放し直す媒体である。その後の宙吊りの状態で、最終的に残ったもの、究極的にそこに実在しているものこそが、「自我」というものなのだろうか。あるいは「公共性」なのかもしれない。
しまいには
リガチャ ガチャガチャと
離人感
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